「終活」という言葉が浸透してきている昨今、よりよい最期を迎えるための準備を積極的に行う人が増えてきています。
生前整理も終活の中の重要な活動のひとつとして注目されていますが、多くの人が気になってしまうのは費用のこと。できる限り安く抑えたいと思うのは当然のことです。
ここでは、生前整理にかかる費用相場をご紹介した後、費用を安くするためのポイントを解説します。
生前整理の基礎知識
生前整理という言葉は知っていても、正しい知識を持っていないと自分が納得できる生前整理はできません。
「生前整理をすると自分の死期が近いように感じて嫌だ」という人も少なくないのが現状です。しかし、生前整理は決してネガティブなものではありません。
まずは生前整理についての基礎知識として、生前整理の意味と、なぜ生前整理をするのか、生前整理でしておくとよいこと、などをご紹介していきます。
生前整理とは
「身の回りを整理する」という文字だけを見るとものを片付けることと思いがちですが、生前整理はものだけに限らず、お金や保険、土地や家なども含まれます。
「もっと歳をとってから生前整理をする」「死ぬ前にすればいい」という人も多いですが、生前整理を始めるタイミングは早ければ早いほどいいとされているのです。
なので、人の死ぬタイミングは誰にもわかりませんし、体が動かなくなることや認知症になってしまうことも考えられます。
体力がある元気なうちに生前整理をすることが、自分が納得できるかたちで生前整理をするためのポイントです。
一度にすべてを整理しようと考えず、できるときに少しずつ進めていくというスタンスで生前整理を始めると、インシデントな気持ちで始められますよ。
生前整理をする理由
生前整理をするもっとも大きな理由は、残された家族の負担を軽減することです。生前整理をしないまま亡くなった場合、持ち主のないものの片付けを残された家族がすることになります。
この作業は、遺族にとって精神的な負担も大きいですが、なにより金銭的な負担をかけてしまうことにもつながってしまうのです。
また、仕事をしながら片付けをするというのは、時間的な拘束を強いることにもなり、想像以上につらい作業になります。
さらに、死後のトラブルを防ぐためというのも生前整理をする理由のひとつです。死後のトラブルとは、相続の問題や財産分与がきっかけで起こるトラブルのことで、仲がいい家族であっても起きてしまうことがあります。
自分が大切に思っている家族がバラバラにならないように、生前整理はとても有効な手段なのです。
このように生前整理をする理由は「遺族のため」ということが大きいのですが、じつは自分のためでもあります。
生前整理をして身の回りをスッキリさせることで、今一度自分の人生を振り返るきっかけになり、新しい人生の第一歩を踏み出す機会になるのです。
生前整理は、忙しく日々を過ごしているあまり忘れてしまっていたものを思い出し、残りの人生を有意義なものに変えてくれるきっかけになるでしょう。
生前整理と遺品整理の違い
決定的に大きく違うところは、生前整理は自分主体でおこなう整理ですが、遺品整理は自身の死後に遺族が主体となっておこなう整理という点です。
生前整理も遺品整理も業者に介入してもらって実行することができますが、遺品が多すぎると莫大な費用がかかってしまうことになります。
生前整理をしたからといって遺品整理をしないで済むというわけではありませんが、生前整理をある程度しておくことで、遺品整理の負担が格段に減ることは間違いありません。
また、遺品整理をする場合、基本的には親族が集まって作業することが原則とされています。なぜなら、遺言書のように法律による決めごとがない場合、故人の所有物は親族で分配しなければならないという決まりがあるからです。
しかし、親族とスケジュールを合わせて同じ場所に集まるというのは、県外に住んでいたり、生活リズムが違っていたりするため想像以上に大変なことでもあります。
生前整理なら、自分の意志で捨てるもの分けるものをほかの家族と相談しながらできるので、体力的にも精神的にも遺品整理と比べ負担が少ないといえるでしょう。
生前整理でしておくとよいこと
生前整理で不要なものを処分することは大前提ですが、そのほかにもしておくと後に遺族が助かることがいくつかあります。
まずひとつ目は、財産目録の作成です。財産目録とは、自分の財産を記した一覧のことで、預貯金や不動産のようなプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も一覧にしておきます。財産目録を作成しておくことで、遺族が迷わず財産の全容を知ることができます。
ふたつ目は、デジタル情報の整理です。インターネットを利用する機会が多い現在では、さまざまなネットサービスを利用している人も多いのではないでしょうか?
月額料金が必要なサービスがある場合、家族に知らせていないと死後しばらく料金を払い続けていたというケースも多くあります。
自分が登録しているデジタル情報の一覧も、家族に伝えておくようにしましょう。
最後は、エンディングノートを記入しておくことです。記入すべきことがあらかじめテンプレート化されているエンディングノートは、本屋や文房具屋、ネットでも簡単に買える時代です。
エンディングノートを記入して家族に置いている場所を伝えておくことで、葬式に呼ぶ人の連絡先や、細かい部分のあなたの情報、あなたの思いを知ることができます。
これら3つの項目は、ぜひ生前整理の一環として実行しておいてください。
生前整理はどこに相談すればいい?
生前整理を自分と家族だけでできればいいですが、できるだけ抜かりなくおこないたいとプロに相談したいと考える人が多くなっています。
家財道具の整理についてついて相談したい場合は、生前整理に対応している遺品整理業者に相談するとよいでしょう。
個人で大きなものを処分するのは大変ですが、整理業者や清掃業者に相談することでサポートしてもらうことができます。
土地や家のような財産に関する相談は、行政書士事務所に相談するのがおすすめです。不動産業者や税理士事務所でも相談に乗ってもらうことは可能ですが、財産に関する分野で幅広く対応してくれるのが行政書士事務所だといえます。
生前整理に詳しい行政書士事務所を見つけて相談してみましょう。
大手の葬儀会社でも、生前整理の相談に乗ってもらえる場合もあります。お墓の相談や葬儀の相談も含めて相談に乗って欲しい場合は活用するといいですよ。
生前整理を専門業者に依頼するメリット
生前整理をサポートしてくれる専門業者に依頼すると、たくさんある不用品を一度に処分できるというメリットがあります。
不用品の中には、運ぶのが大変な重たいものや大きなもの、通常の処分ができない薬品など、個人で処分するには知識や労力が必要なものも多いですが、専門業者に依頼すれば一度に処分を引き受けてくれます。
また、仕事をしながら生前整理をしようとする場合、時間がなかなか作れず作業が進まないというときも専門業者に依頼することで短時間で終わらすことが可能です。
何から生前整理を始めればいいかわからない場合も、専門業者からのアドバイスを受けることでスムーズにスタートさせることができるでしょう。
生前整理業者の中には、財産目録の作成方法やエンディングノートの作成方法など、細かなところまでアドバイスをくれる業者もありますので、生前整理に対しての知識がなくてもスムーズに進められる点もメリットとして挙げられます。
失敗しない業者の選び方
生前整理を専門とする業者は多く、終活ブームにより年々増えている傾向にあります。しかし、すべての業者が優良な業者というわけではなく、残念ながら悪徳業者と呼ばれる業者がいるのも事実です。
業者に依頼するということは費用がかかるので、うっかり悪い業者を選んでしまうと損をしたり、後悔したり、トラブルの原因になったりしてしまいます。
ここからは、後悔しない生前整理をするために、失敗しない業者の選び方について解説していきます。
見積書や納品書の有無
見積書や納品書を依頼したときに、断ってくる業者は悪徳業者だと思ってよいでしょう。とくに見積書は、依頼する前の料金やサービス内容を見るために大切なものですので、紙面で出してもらえないのは通常ではありえません。
さらに、見積書の内容もしっかりと確認しておきましょう。大雑把に書かれた見積書ではなく、項目別に詳細が書かれている見積書が望ましいです。
適当に業者を選ぶのではなく複数の業者と相見積もりをとり、どの業者に依頼するべきかを熟考してください。
自分にとって不要なサービスが見積もりに書かれていた場合は、遠慮なく不要だと伝えることも大切です。
自治体の許可はあるか
不用品処理の業者は、基本的に自治体から許可を得なければゴミを捨てることができません。
たとえば、自治体管轄の処分場に運ぶ場合は「一般廃棄物収集運搬業の許可」が、自治体管轄の処分場では捨てることができないものを運ぶ場合は「産業廃棄物収集運搬業の許可」が必要です。不用品の買取をおこなっている業者なら「古物商」の許可も持っていないといけません。
これらの情報は業者のホームページに記載されていることが多いですが、記載されていない場合は問い合わせて聞いておきましょう。
実績を確認する
生前整理のみの業務をおこなっている業者ばかりではなく、多くの業者は遺品整理の業務や清掃業務と併用して生前整理業務をおこなっています。
業務項目に「生前整理」を記載していたとしても、実績がなければいいサービスを受けられない可能性が高いです。
生前整理の実績が多い業者は、生前整理のことをよく理解している業者なので作業もスムーズでよいサービスを受けられます。
実績が曖昧で確認しても信用できないという場合は、生前整理に特化した業者を選ぶのがおすすめです。
遺品整理士の在籍
民間資格である遺品整理士や、生前整理アドバイザーが在籍しているかを確認しておきましょう。
これらの資格を持った人が在籍していることで、さまざまなサポートやアドバイスを受けることが可能です。
また、このような業者は定期的にセミナーを開いていることもあるので、生前整理について知りたい人は行ってみるのもよいでしょう。
ものが多く、部屋の整理をどのようにすればいいかで悩んでいる場合は、ライフオーガナイザーや整理収納アドバイザーの在籍も確認しておけば心強いです。
料金が明確で適正か
曖昧な料金設定ではなく、しっかりと明確な料金であることはとても重要な項目です。安すぎる業者や高すぎる業者も注意してください。
「安いなら安いだけいいのでは?」と思われるかもしれませんが、激安を提示している業者の中には、基本料金は安くとも不要なオプションをたくさんつけて、当初の予定よりかなり高い料金を請求してくる業者も存在します。
見積書をもらったときに「なぜこの料金になるのか」をしっかりと説明できる業者に依頼しましょう。
生前整理の料金相場は?
生前整理の料金は、住んでいる間取りによって違います。地域や選ぶ業者、ものの多さでも多少の前後はありますが、大きく金額が変わるのは間取りの大きさとしている業者が多いようです。
なぜなら、部屋が大きくなればなるほど人を増やさなければなりませんし、ものも多くなるからです。
以下に、全国平均の料金相場をまとめました。見積もりをする際の参考にしてください。
部屋の間取り | 料金相場 |
1K | 約36,000円〜 |
1DK | 約57,000円〜 |
1LDK | 約80,000円〜 |
2DK | 約107,000円〜 |
2LDK | 約130,000円〜 |
3DK | 約160,000円〜 |
3LDK | 約190,000円〜 |
4LDK | 約230,000円〜 |
費用を安くする3つのポイント
生前整理を業者に依頼した場合、いくら部屋の間取りが小さくても決して安い金額ではありません。誰もが少しでも生前整理の費用を安く抑えたいと思うのではないでしょうか? 費用を安くするには、3つのポイントがあります。
まずひとつ目のポイントは、処分できるものは自分で処理することです。少しずつ家庭ごみと一緒に出したり、自治体の処理場へ運んだりして処分します。早めに行動することで余裕を持っているて処分ができるので、まずはゴミの捨て方を調べておきましょう。
家電製品の処分には通常、家電リサイクル法で定められたリサイクル料金が発生しますが、リサイクルショップに依頼することでリサイクル料金がかからずふたつ目のポイントは、リサイクルショップを活用することです。引き取りってもらえます。
最後のポイントは、買取サービスを利用することです。近年では、ネット買取サービスで気軽に不用品を買い取ってもらえます。
運送業者に集荷依頼をして引き取りに来てもらえるので、自分で運ぶ手間がありません。家電やインテリア雑貨、パソコン、楽器など買い取りってもらえるものの種類も多いですし、何より不用品がお金に変わるので必ず活用してほしい方法です。
まとめ
生前整理を「死」というネガティブなものではなく、大切な家族への愛や自分のこれからの人生をよりよく生きるための手段として実行していただきたい終活のひとつです。
・生前生理は早蹴れば早いほどいい
・業者を頼ることで家族への負担が減る
・費用をおさえるために自分で少しずつものを減らしたほうがよい
すべてを生前整理業者に依頼するのではなく、買取サービスやリサイクルショップを賢く利用しながら費用を抑える工夫をしてくださいね。