現代の日本社会において、着物を着るということを日常生活に取り入れている方はあまりいません。
そのため、着物になじみがないという人はもちろん、その価値を正しく把握できるという人もほとんどいないのではないでしょうか。
「最近亡くなった祖母の着物を相続したが、売ってしまおうにもどれほどの価値があるかわからない…。」
「この刺繍のような部分で着物の作家がわかるらしいけど、まったく誰だかわからない…。」
といったように、着物の価値に関する悩みを抱えている方がいらっしゃることもまた事実です。
そんなときに大切になってくるのが、着物の「落款(らっかん)」についての知識です。
落款とは、ひとことで言うと、「作家が自分で生み出した作品に対して残す、自分の作品だという証拠」のことです。
つまり、落款によってその着物の作者を追跡することができる、ということにもなります。
ほかにも、着物には落款とは別に証紙という保証書のような紙が付いている場合もありますし、いざ着物の価値を正しく知りたいと思っても、なかなかややこしくて困ってしまうという意見をよく耳にします。
この記事では、落款の基礎知識から、証紙との違いや、また落款がなくても着物はちゃんと売れるのか、といったお悩みの解決をお手伝いできるよう、さまざまな観点から解説していきます。
そもそも着物の落款とは何なの?
落款とは、着物に押された印鑑や刺繍のようなもののことで、正式には落成款識(読み方:らくせいかんしき)と呼ばれるものです。
実は、落款が使用されるのは着物に限ったことではありません。
落款をほかにたとえるならば、書や絵画といったさまざまな芸術作品が完成したとき、「確かに自分がこの作品を生み出しました」という証拠として作品に残す、いわば名札やサインのようなものといえます。
また、落款には特定の書式やルールが定められていないので、その大きさや書体はもちろん、どんなことを書くかということも作家それぞれに委ねられています。
※このように落款が付いている着物を「作家物」と呼ぶこともあります。
着物にはいろいろな種類のものがありますが、その織り方や染め方にそれぞれの特徴があり、専門家であればそれらの情報をもとにどんな着物であるかを判別できることがあります。
しかし、いくら着物の専門家とはいえ、一目見ただけでは産地や作者といった細かい情報までをはっきりと特定するのが難しいという場合もよくあります。
そのようなときに、落款は非常に役立ちます。
落款を見れば、その着物が誰の作品で、どこの工房で作られたのかなどの情報を特定しやすくなります。
つまり落款とは、着物の価値を判断するために有効な材料だということになります。
たとえば、同じような見た目の着物が並んでいて、あなたがぱっと見ただけではその違いがまったくわからなかったとします。
しかし、どんなに似通った着物がたくさんあったとしても、あなたの着物だけに唯一、落款が見つかれば、その1つについては「しっかりとした作家による作品であり、価値の低い類似品や模造品ではない」という判断を下すことができます。
通常、着物の落款はおくみか衿先のようなところに付いています。
絵画など他の芸術作品であれば、色彩が少し弱いような箇所にあえてアクセントとして落款を入れることがあるのですが、着物の場合は少し違います。
着物を着たとき、あえて落款が見えないところにさりげなく証拠を入れるというのが着物の落款のセオリーになっています。
落款が読めない…誰のものなの?
落款は、作者の名前や産地・工房などを調べるためにとても役立つものです。
もちろんすべての着物に落款があるわけではないので、落款がなければ着物についての情報を得ることは難しくなってしまいます。
しかし、いざ落款があったとしても、一般人が簡単にその落款を読んで識別できるようなものではなく、難しい字体やシンボルマークのような表現になっていることがよくあります。
したがって、「落款がある=どの作家による作品なのか、どんな人が調べてもすぐわかる」というものではないので注意しましょう。
ただし、着物の専門家となると話は別です。
専門家は着物に関する知識が豊富なので、一目で有名な作家による作品だと断定できることもあります。
また、すぐには誰の落款であるかということがわからなくとも、「この落款はあの初代作家の落款に似ているな。つまり、初代ではないけれど、この一門の着物なのだろう」
などと、いろいろな情報をもとに作品の正しい価値についてしっかり考えることが可能です。
現在、インターネット上のQ&Aサイトなどで、
「この落款は誰のものなのでしょうか?」
「この落款はなんと読むのでしょうか?」
といった質問を目にすることがよくありますが、専門的な知識や経験がなければなかなか識別することが難しいというのが実際のところです。
※参考:加賀友禅の落款一覧
着物のブランドと言えば、「加賀友禅」がすぐに思い浮かぶという方もいらっしゃるでしょう。
現在、加賀友禅はインターネット上で落款が公開されているので、もし気になった場合は以下のようなサイトを利用して調べてみるとよいでしょう。
http://www.kagayuzen.or.jp/sign/
落款?証紙?何が違うの?
落款とはまた別に、着物には証紙というものが付いていることがあります。
この証紙とは、「この着物はこのような製品であり、間違いなく高級な着物である」ということを証明する書類で、いわば宝石の鑑定書や、品質保証書のようなものです。
その点で落款も証紙も、着物の価値を判断するための材料として役立つという、よく似た立場にある存在です。
しかし、落款はあくまで作者や工房などの情報をシンプルに示しておくことに留まるものですが、証紙の場合は着物の「ブランド」と、その内容や根拠をはっきりと示すものだと考えてください。
それに、着物の証紙は公的(経済産業大臣の指定する検査)を正式にパスした、正当なブランドの着物にのみ付けられます。
また、証紙には発行元となる組合があり、その組合によって厳しくクオリティが保たれているので、「証紙が付いている=まず間違いなく高級な着物である」と考えて問題ないといえます。
証紙には
・絹100%であるか
・機械織りであるか手織りであるか
・どんな染め方をしているのか
などの情報が記載されています。
そこで重要になってくるのが、
・証紙は高級ブランドの着物であることを示しているが、具体的にその着物を誰が作ったのか、ということについては示していない
ということです。
たとえば、同じ柄・素材で作られた加賀友禅の着物が2着あるならば、その2着にはほぼ同じ証紙が付けられているはずです。
しかし、作者が違えば、別々の落款が付いています。
そういう意味から、落款は作者の名札のようなものだと言われており、証紙とはまた別の重要な意味を持っているということにもなるのです。
落款がなくてもちゃんと売れる?
これまで解説してきたとおり、落款は着物の作者を調べるための重要な手がかりです。
そして「著名な作者が作った作品である=高い価値がある」というのは、着物に限らず、絵画や陶芸など、どんな芸術品にもあてはまることです。
したがって「落款がある=買取時に高い値段がつく」可能性は高くなります。
もし売りたい着物に落款が付いている場合、査定の申込時にしっかり落款の存在を伝えましょう。
高値で買い取ってもらえる可能性はあります。
でも、ちょっと待ってください。
反対に「落款がない=確実に粗悪な着物だ」と判断されるかといえば、そういうわけでもありません。
落款が付いていなかったとしても、いざ査定に出してみたら、実は高額で買い取ってもらえたという例もあります。
その場合は、着物の状態や付属品など、いろいろな観点からの査定の結果として、高額で買い取られたということが多いのですが、落款がなくてもきちんと売りに出すことは可能なのです。
※注意!「落款がない=偽物」ではない!
たとえば買取の場合に落款があれば、わかりやすく「これは高級品だろう」という目線から査定をスタートしてもらえることは確かです。
ただし、落款がなくても「落款がないから偽物や粗悪品に違いない、買取はできない」と判断されるわけではありません。
落款はあくまで作家の名札のようなものだ、というところにその理由があります。
これまで何度も解説してきたように、落款は作家によって「これは確かに自分の作品です」ということを示すために付けられるものです。
しかし、実はその落款をつけてよいかどうか、ということについては明確な条件が定められているわけではないのです。
極端にいってしまえば、大変有名な作家が落款を付けることもあれば、駆け出しの作家が落款を付けることや、悪徳業者が偽物や粗悪品の価値を高く見せかけるために付けることも可能だということになります。
(反対に、証紙はその発行にあたって組合が関わるものであり、証紙はわかりやすく「その着物が高級品である」ことを示してくれます)
したがって、なんらかの理由で落款が付けられていなくても(たとえば、複数の職人が関わったことで落款が付けられなかったということがあります)、その素材や状態が良好であることから高値で買取してもらえたということもあるのです。
逆に、「誰かの落款が付いているから、絶対に高く買い取ってもらえるはずだ!」と期待して査定に出したのに、まともな価格が付かなかったということもありうるのです。
むしろ買取にあたっては、落款の有無というよりも、着物そのものの状態の方が大切です。
落款があったとしても、最悪の場合、買取を断られるということも考えられます。
たとえば、
・カビが生えている
・日焼けして色落ちしている
・すぐにわかるような傷が付いている
などの場合には、どんなに有名な作家の落款が付いていたとしても、高値で買い取ってもらえない可能性があります。
着物の買取なら、専門的知識のある業者を選ぶのがベスト!
着物を査定に出すときは、高い専門的知識のある査定員が在籍する業者やサービスを選ぶことが大切です。
落款や証紙がある場合、その価値を適正に評価してもらえることはもちろん、落款などがない着物の場合でもしっかりと真摯に査定してもらえる可能性が高いからです。
逆に、気軽に持ち込みできるからという理由でリサイクルショップで査定してもらうというのは、少し待ってください。
その店舗に着物の専門的知識のない店員しかいなかった場合には、期待するような金額での査定を受けることが難しくなってしまいます。
また、買取を急がないという場合には、オークションサイトなどを使って高値がつくかどうかの様子を見てみるという方法があります。
しかし、これは自分自身がしっかりと「これはこんなに有名な作家の作品で、落款も証紙もあって、ベストな状態です!」というような売り込みができる状態でなければ、そもそも買い手がつかないということも考えられるので、少し難しい方法だといえます。
そのため、着物の買取にあたっては、インターネットなどで着物の専門的知識があるということをしっかりうたい文句としている業者を選び、きっちり査定してもらうことが一番確実で手早いベストな方法といえます。
そんな着物の買取にあたっておすすめの買取業者を3つ紹介していきます。
バイセル
バイセルは、着物の出張買取で有名な買取業者です。
上記のページでは、着物の買取事例が掲載されており、どのような着物がいくらくらいの価格で買取されるのかということがわかりやすく示されています。
特に、証紙がないとか、シミがあるとか、なかなか値段が付かないような着物に対しても、「処分するよりまずは査定を!」というスタンスで接してくれるので、気軽に査定を申し込みできるのがユーザーにとってはうれしいポイントです。
バイセルの査定は最短であれば即日対応で、着物に対してしっかり知識のあるスタッフが丁寧に説明してくれるので、ユーザーの満足度が高いというところも要注目です。
買取プレミアム
買取プレミアムでの着物の買取は、出張買取だけでなく、宅配買取や持込買取など、さまざまなスタイルを選択できることが魅力のひとつです。
また、女性査定員が在籍していることもアピールされているので、出張買取などで男性が来て強い態度で接されることが不安という方でも安心して利用することができます。
さらに、申し込みの前にとりあえず無料電話相談ができるうえ、申し込み自体も24時間受け付けてもらえるというところも買取プレミアムのうれしいポイントとなっています。
ザ・ゴールド
「出張料・査定料・キャンセル料などすべて無料!」といううたい文句が目を引くザ・ゴールドは、最近TVCMなどでその名を耳にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
また、ザ・ゴールドの買取実績として、最大で50万円近い高価買取の実績も示されており、高額査定にも期待が持てます。
着物だけでなく反物や和装小物なども買取してもらうことができ、専門スタッフが丁寧な査定をしてくれるということで、売りたいと思ったものがあればとりあえず相談してみるとよいでしょう。
また、上記ページには実際にザ・ゴールドを利用したという方のコメント動画も掲載されているので、一度チェックしてみることをおすすめします。
まとめ
・落款とは着物作家が自分の作品であることを示す名札のようなもの
・落款は公的な意味合いは持たず、作家によって付けることを委ねられている
・証紙は公的な機関の証明書であり着物のクオリティを証明できるもの
・落款や証紙があれば買取時に高値がつくことを期待できる
・落款の有無よりも実際は着物の状態が買取査定には影響する
・着物の買取業者は専門的知識のある査定員のいる店舗を選ぶこと
着物の落款は、単なる作家の名札としてだけでなく、高く買い取ってもらうためも重要な意味を持っています。
しかし、落款があるから高値で売れるとか、落款がないから売れるものではない、という思い込みはとても危険です。
落款があってもなくても、着物の状態が良ければ高値で売れることがあります。
着物の買取にあたっては、まず着物そのものの状態がその査定金額に大きく影響するのです。
また、落款が付いていても、一般人にはなかなか識別が難しく、落款からその着物の作家を調べるということも困難な場合があります。
そのような場合には、やはり着物に対する専門的な知識を持っている業者に査定してもらうことが一番効果的です。
インターネットの買取サービスを利用すれば、出張買取などで手間や時間をかけずに買い取ってもらうことができますし、落款や証紙がしっかりした着物であれば、思いがけない高値が付く可能性があります。
今回の記事をとおして落款に対する正しい知識を身に着け、できるだけ高い値段で着物を買い取ってもらうことのお手伝いができれば幸いです。