お金が必要になったとき、みなさんはどんな方法でお金を調達しますか?
・買取サービスを利用して、手持ちのブランドバッグやアクセサリーを売る
・オークションやメルカリ等のフリマアプリで、趣味のアイテムなどを売る
・消費者金融で融資を受ける
など、いろいろな方法があると思います。
しかし、今回紹介したいのは「質屋」です。
「質屋って、聞いたことはあるけどどんなものかよくわからないなぁ…」
「お金が必要な時に便利らしいけど、いきなりはお店に行きづらいなぁ…」
「そもそも買取と質入れって何が違うんだろう?」
質屋と聞いて、こんな風に思う方も多いでしょうし、質屋という名前をほとんど聞いたことがないという方もおられることでしょう。
上手に使えば心強い味方となってくれる質屋について、その仕組みやシステム、メリットやデメリットなど、幅広く質屋について解説したいと思います。
質屋とは、一体何なのか?
質屋について簡単に解説します
まず、質屋とは一体どんなビジネスを指しているのでしょうか?
ズバリ簡単に表現するならば、
①融資
②買取
③販売
を行うビジネスです。
それではもう少し詳しく見ていきましょう。
①融資 | ②買取 | ③販売 |
客が持ち込んだ品物を 査定し、それを※担保に お金を貸す | 客が質屋に持ち込んだ 品物を買取(換金)する | 買い取った品物や、質流れ 品を客に販売する |
※客がお金を期限内に返済できなかったとき、品物が質屋のもの(質流れ品)になるという契約を結ぶことを担保といいます。
という3本の柱をもとに、質屋というビジネスは昔から現在に至るまで運営されているのですが、注目すべき最大の特徴はメインの業務である①の融資です。
質屋の料金システムは?利息や税金はどうなっているの?
品物を持ち込んで、融資や買取を行ってくれるのが質屋の業務ということですが、それではいったいどんな料金システムになっているのでしょうか?
質屋の料金システムはお店によって様々です。
質屋の方針や地域性などにより、持ち込まれる品物の買取金額の相場が定められており、客はその相場に基づいて査定された金額で融資を受けることになります。
しかし、融資を受けるということはお金を借りることですから、借りたお金には利息がつきます。
その利息は「質屋営業法」という法律によって上限が定められていますので、その上限を超えない範囲でそれぞれの質屋が料金システムを決定することになっています。
※こちらは質屋の利息設定の一例です。
質屋を利用する際には、利息設定についてしっかり確認するようにしましょう。
100万円以上 | 借入額の1.2% |
30万円以上、100万円未満 | 借入額の1.5% |
10万円以上、30万円未満 | 借入額の1.8% |
10万円未満 | 借入額の2.3% |
(https://shichiya-tokyo.com/kinri_shikumi1128/ より引用)
基本的には融資を受けるよりも買取のほうが高額になるため、自分の状況に合わせて融資か買取かを選ぶということになります。
また、査定金額については、ホームページ等で代表的なブランドものなどの買取相場を公開している質屋もありますので、事前にこのような情報を入手しておくことも有効です。
また、質屋に品物を買取してもらって手にしたお金には、「譲渡所得」による所得税がかかる可能性があります。
これまでに不動産や車を売ったことがあり、確定申告の際に「譲渡所得」という税金について計算したことがある方もおられるでしょう。
しかし、「譲渡所得」とは、基本的に売ったことで利益を得られた場合に、その利益に対して課せられる税金です。
例1:(100万円で買った時計) - (60万円で質屋に引き取られた)=40万円の損
上記の例1のように、40万円を損している場合は譲渡所得はありませんので、所得税の心配をする必要はありません。
ただし、
例2:(100万円で買った時計) - (プレミアがついて150万円で質屋に引き取られた)=50万円の得
ということになると、所得税が発生する恐れがあります。
とはいえ、基本的に質屋での買取によって利益が得られることはありませんので、所得税についてはあまり心配しなくても良いというのが一般的な考え方となります。
質屋と買取の違いは?メリット・デメリットについて解説します
質屋とハードオフは何が違うのか
まず、ここまでざっくりと質屋について解説してきましたが、質屋の最大の特徴は「融資を受けられる」ということです。
たとえば、ハードオフのように持ち込んだ品物を買い取ってくれるシステムのお店がありますが、質屋と買い取りサービスとの最大の違いは、やはり「融資を受けられる」ということにあります。
もう少し詳しく考えてみましょう。
質屋での融資は、品物を担保に入れることによってスタートします。
先ほども少し触れましたが、担保とは、
「お金を借りるにあたって、品物をお店に預けます。
借りたお金をきっちり返済できなかったら、預けた品物はあなたに差し上げます。」
という契約によって品物を預け入れることを指します。
つまり、質屋で品物を担保に融資を受けているということは、まだ品物を手放した状態ではなく、預けているだけということになります。
ハードオフなどの買取店舗では、品物を売って換金しなければお金を手にすることはできません。
店舗に売ってしまえばその品物は完全にお店の所有物となるため、お店は品物を中古として販売するなり、部品をとってすぐ処分するなり、自由にしていいということになります。
しかし、質屋で担保に預けたものは、担保となっている間はそのまま質屋に預かられているため、お金を返済すれば品物は無事に帰ってくるのです。
これが、質屋と買取店舗との大きな違いです。
質屋を利用するメリット・デメリットは何なのか
続いて、質屋を利用してお金を作る際のメリットとデメリットについて、その他のお金を作るサービスと比較しつつ考えていきたいと思います。
質屋を利用するメリット | 質屋を利用するデメリット |
・質流れがある ・厳しい審査の必要がない | ・品物がなければ利用できない ・借入できる金額が少なくなりがちである |
質屋を利用するメリット
・質流れがある
という点は、質屋独特のシステムであり、銀行カードローンや消費者金融でお金を借りる際とまったく違ったルールでお金を借りられるというメリットになるのです。
たとえば、品物を質屋に質入れしてお金を借りたとき、そのお金が返せなければ品物は質流れして、質屋のものになってしまいます。
これだけ見ればメリットであるとは考えがたいかもしれませんが、実は質屋は質入れの際に
「このお金は返ってこなくてもいい。品物が自分のものになるんだから。」
という考えで融資を行っているのです。
そのため、返済の期限が来ているのに入金がなかったとしても、質屋は督促を行いません。
つまり、借りた方はお金を返さなければ品物が質流れになってしまうのですが、逆にいうとそれ以外のデメリットやペナルティを背負う必要がないということになります。
たとえば、消費者金融などでの借入の場合は、返済できなければその分の遅延損害金(いわゆる延滞金)がどんどんとかさむことになってしまいます。
しかし質屋の場合は、質入れした品物が質流れするだけで、厳しい督促もなければそれ以上のお金を支払う必要もないのです。
・厳しい審査の必要がない
銀行カードローンや消費者金融でお金を借りる際には、その申込にあたって厳しい審査が必要になります。
年収や勤務先の情報、その他各種証明書などの書類を提出して審査を受ける必要があるため、どうしても時間や手間がかかってしまいます。
また、個人の信用情報も照会されるため、過去に金融事故などのトラブルがあった場合には、審査に時間を費やしても結局融資を受けることができなかった、というケースも十分に考えられます。
(ちなみに、審査に落ちた履歴や融資を受けたという事実は信用情報に残るため、今後の審査にマイナスの評価を与えるのですが、質屋での査定や融資は信用情報と無関係となっています。)
質屋で融資を受ける場合には、そんなステップを踏まずとも、品物を持ち込むことで即現金を手にすることができます。
これは質屋を利用する大きなメリットであるといえます。
質屋を利用するデメリット
・品物がなければ利用できない
質屋を利用するためには、必ず何らかの品物を質屋に持ち込む必要があります。
これは、融資を受ける場合でも、買取を希望する場合でも共通です。
質屋は品物を査定し、その金額に見合ったお金を出すビジネスですから、単純にお金を借りたいという客に対してお金を貸す、いわゆる「貸金業」としての業務を一切おこなっていません。
そのため、宝石類やブランド品などのある程度価値を持った品物の現物がなければ、質屋を利用することができない、という点はデメリットとなります。
逆にいうと、銀行カードローンや消費者金融で融資を受ける際には、保証人などが必要になることはあっても、特に何も現物を担保にすることなくお金を手にすることができるということになります。
・借入できる金額が低くなりがちである
メリットの際にも説明しましたが、質屋はお金が返済されなくても基本的に督促することはありません。
それは、そもそもお金の返済がなくても品物が質屋のものになるから構わないという意識があるからです。
質屋にとっては返ってくる前提のお金ではないということで、どうしても借り入れることができる金額は低くなってしまいがちです。
そのため、質入れするにあたって価値の高い品物を持っている場合には、買取やオークションなどの手段の方がより多くのお金を手にすることができます。
ただし、その場合は確実に品物を手放さなければならなかったり、オークションなどではいつ品物が売れるかわからなかったりするというリスクもあります。
※このように、質屋を利用するメリットとデメリットは正に表裏一体と言えるものであるため、自分の状況と照らし合わせて上手に質屋を利用しましょう。
質屋を利用するのにベストなタイミングはいつなのか
質屋を利用するにあたって、メリットやデメリットがあり、
「うまく利用できれば質屋は心強い味方になってくれそうだな…」
という気持ちが少し芽生えてきた頃ではないでしょうか?
それでは、質屋を利用するのにベストなタイミングとは、一体いつなのでしょうか?
急ぎでお金を借りたいとき
たとえば、急な冠婚葬祭や不慮の事故に見舞われて仕事に支障が出てきてしまったとき、質屋での融資はとても便利に機能します。
こんな不測の事態に見舞われたとして、どこでお金を借りようかと考え、消費者金融で融資を受けることに決めたと仮定します。
そうなると、申込にあたっていろいろな書類を書く必要がありますし、本人確認書類や所得証明書が必要だと言われ、役所に取得しに行かなければならなくなるかもしれません。
また、職場への在籍確認なども必要と言われ、お金を借りていることを職場に知られたくない場合には嫌な思いをすることもあるかもしれません。
そして、そのような手間を乗り越えて実際にお金を手にするまでには、どうしてもある程度の時間がかかります。
(最近では即日融資可能なカードローンなどもありますが、午前中に申込をする必要があったり、金利が高かったりするなどの場合がほとんどです。)
その点、質屋を利用する場合には、営業時間中に品物さえ持ち込むことができれば融資を受けることができます。
消費者金融などですでに借入している場合などには、増額をお願いしても認められない場合があります。
そんな時は他に貸してもらえそうな業者を見つけなければなりませんが、質屋であれば現状で他からいくら借入れていたとしても、品物に価値さえあれば融資を受けることができます。
このように、急ぎでお金を手に入れたいという時には、質屋での借入はとても有効な手段です。
品物を手放したくないとき
質屋の最大の特徴は、質入れによる融資を受けられることです。
質入れは売却とは違い、品物を質屋に預け入れることですから、預けている間の所有者はもとの所有者のままです。
そのため
「お金はどうしても必要だけど、この品物は大切だから手放したくない…」
という時には、質屋での融資がうってつけです。
もちろん返済ができなければ大切な品物は質流れしてしまいますが、しっかり返済すれば品物は無事手元に戻ってきます。
もしこれが買取であれば、
「大切な品物だからお金ができたらすぐに買い戻そうと思っていたのに、もう誰かに買われてしまっていた…」
という悲しい事態が起こってしまう可能性があります。
しかし、質屋での融資であれば、大切な品物が戻ってくる可能性を残しながらお金を手にすることができます。
もしどうしても返済の都合がつかず、品物が質流れしそう(基本的には3ヶ月の返済期間があります)になった場合には、利息分だけでも返済して質入れ期間を延長することが可能になる場合もあります。
連絡がなければそのまま質流れになってしまいますので、必ず事前に質屋へ相談することが大切です。
まとめ
質屋というビジネスの仕組みをその他買取サービス等との違いにも触れながら解説してきました。
質屋は、その他買取サービスに比べると、やはり
・手軽である(品物さえ手元にあれば利用できる)
・質流れがある(お金を返せなかった時に、質入れした品物を失う以外のペナルティがない)
という点が大きな特徴であり、メリットでもあります。
しかし、その反面で
・借入金額が低くなりがち
というデメリットは見過ごすことはできません。
つまり、
「どうして自分自身に今お金が必要なのか」
ということを考えたときに、まとまった金額が必要ということであれば、やはり買取サービスを利用した方が良いという結論になるでしょう。
しかし、とにかく急ぎでお金を借りたかったり、手軽に借りてたかったりするときは質屋での融資がオススメです。
逆に、あまり急ぎでないけれどもお金が必要ということであれば、オークションなどで高値で売れることを期待して待つのもひとつの手段です。
お金が必要になるタイミングや事情は人それぞれですし、予測不可能の事態に巻き込まれたことでお金を作らなければならなくなるリスクは、どんな人にも平等にあるといえます。
そんなとき、質屋での融資を選ぶのか、買取を選ぶのか、いろいろな可能性を踏まえながらベストな選択をおこなえるようになりたいものです。