スマホやパソコンで買物や決済、入出金、投資などが手軽に行える昨今。もしその端末の持ち主が突然亡くなったら、遺された家族やパートナーは故人が残したデータをどう扱えばいいのでしょう?何よりあなた自身は万一に備えて、端末やクラウド上に残るデータについて何か対策を講じていますか?
こうした「デジタル遺品」は、放置されるとトラブルの種になりかねません。ではどのように対処すべきか。その対策や頼れるサービスについてご紹介します。
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目次
デジタル遺品とは何か?
デジタル遺品とは、亡くなった人のスマホやパソコンなどの端末内部、あるいはクラウド上に保存されたデータのこと。具体的には次のようなものが挙げられます。
[デジタル遺品の具体例]
l 端末のハードディスク内のデータ(写真・動画・文書・住所・電話番号・メールアドレス、メールの送受信データなど)
l クラウドストレージ(Dropbox、Evernote、Google Drive他)に保管されたデータ(同上)
l CD-R・メモリーカード・USBなどメディア内のデータ(同上)
l ネット上の登録データ(SNSアカウント・ネットバンク口座・ネット証券口座・クレジットカード情報・電子マネー情報・動画/音楽ほか有料サービスのアカウントなど)
ネットショッピングやネットバンキングはもちろん、証券取引やFXといった資産運用においても、スマホやパソコンはもはや不可欠なツールとなっており、その中に保存されたデータは時に莫大な資産価値を生み出します。
しかし、これらデータの存在は家族と共有されていないことが多く、もしものことが起きた場合に、デジタル遺品として把握されないまま放置される恐れがあります。その一方で有料サービスがいくつも解約されないまま、自動で引き落としされ続けるという事態も起こり得ます。
ある大手調査会社が20代以上の男女2千人を対象に行った「終活に関する調査」(2018.10)では、「お墓・納骨先の準備」や「相続の手続き」「遺書の準備」を差し置いて、デジタル遺品に関する項目(デジタルデータの生前管理や死後の対処法などの検討)が、「興味のある終活」の第3位にランクインしました。
二人以上世帯でのパソコン普及率が約80%に達し、スマホ利用率も85%を超えた今日。デジタル遺品は老若男女を問わず、誰もが自分ゴトとして意識せざるを得ない問題になっているのです。
デジタル遺品の種類別トラブル例
デジタル遺品は時に膨大な個人情報や重要情報が含まれているため、整理や処分方法をめぐってトラブルが急増しています。実際に起こり得るトラブルを、デジタル遺品の種類別にまとめてみました。
①決済やお金に関するトラブル
ネットでの買物が日常化している中、クレジットカードや電子マネーの情報が残ったまま端末を処分すると、情報が流出して悪用される恐れがあります。
また、ネット銀行やネット証券の口座も資産価値のあるデジタル遺品ですが、情報が家族と共有されていないと口座にアクセスすることさえできず、トラブルの火種になるかも知れません。FX(外国為替証拠金取引)で故人が資産運用をしていた場合も、知らぬ間に負債が生じて遺族に引き継がれてしまう場合があります。
②写真・動画・ファイルなどに関するトラブル
パソコンやスマホには数々のプライベートな情報が保存されていますが、その中には家族やパートナーには見られたくない画像や、趣味に関する情報が保存されていることがあります。
例えば成人向け画像や動画などは、プライバシーをのぞき見たような感じがして気まずいものです。ましてや個人的な交際相手とのやり取りなどは、場合によっては遺族を傷つけることにもなりかねません。
③SNSやブログのアカウントに関するトラブル
Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSを利用したり、ブログで情報発信したりする人は多いですが、利用者が亡くなった後もアカウントを放置していると、成りすましによる悪用などで第三者に迷惑をかける危険性があります。
④住所・電話番号・メールアドレス・LINE履歴などに関するトラブル
プライベートな友人・知人から仕事関係の連絡先まで、あらゆる個人データをスマホやパソコンだけで保存・管理している人が多い中、突然持ち主が亡くなったら、遺族は誰に連絡をとればいいのか分からず困惑するかも知れません。
また、データの完全消去をせずに個人の端末を処分すると、第三者の個人情報から仕事上のメール履歴まで、重要な情報が流出して周囲に迷惑をかけてしまう恐れもあります。
デジタル遺品整理の重要性
総務省の「平成30年版情報通信白書」によると、60代のスマホ所有率は44.6%、70代は18.8%となっており、高齢者によるスマホやデジタル機器の利用は、今後急速に増えていくものと思われます。
また、キャッシュレス化が進展するにつれて「スマホの財布化」も進み、直接的な資産はもちろん、取引履歴や自動引落契約の情報などもスマホに集約されていくでしょう。そうなった時、パスワードがわからないからといって、故人のデジタル遺品を放置しておけるものでしょうか。
デジタル遺品によるトラブルを避ける最善の方法は、デジタル遺品整理の重要性を深く認識したうえで、本人が自ら生前整理をしておくことです。大切な家族が後々トラブルに巻き込まれないよう、今から実行できる対策を次章でまとめてみました。
デジタル遺品のトラブル防止策
①ログインIDやパスワードをリスト化する
ログインIDやパスワードは他人に知られないようにするのが鉄則ですが、遺族がデジタル遺品整理を行う時に備えて、利用している端末のパスワードやネットサービスのアカウント情報をリスト化して保管することも大切です。
そしてリストは遺族がいざという時に見つけ出せるよう、エンディングノートや通帳など、遺品整理の際に必ず目に触れそうなものに挟んでおくのがいいでしょう。
②自動削除ソフトを使用する
家族にも見られたくないデータがある場合は、早めにデータを削除しておくか、まとめてフォルダに入れてロックしておきましょう。フォルダをロックするには、フリーソフトやアプリが利用可能です。
また一定期間パソコンの起動や更新がない場合に、内部データを削除してくれる「自動削除ソフト」や、デスクトップ上に遺言が現れ、それを開くとデータが削除されるソフトを利用する手もあります。
③金融機関の電子口座の扱いを明確にしておく
遺産分割の際に、最も揉め事になりやすいのがお金の問題です。生前から各種電子口座の存在や、保有資産の状況が家族にも確認できるよう情報を整理しておきましょう。不要な口座や稼働していない口座は、前もって閉鎖するか残金をゼロにしておくのがベストです。
具体的には、ネットバンキング、オンライン証券、FX、仮想通貨、先物ネット取引などの口座が挙げられます。特にFXや先物取引では、故人の死後も取引の持ち高・ポジションが継続され、相場の急変動により多額の評価損失を抱えるリスクがあるので要注意です。
④エンディングノートに記録しておく
エンディングノートとは、万一の事態に備えて治療や介護、葬儀などに関する希望、家族への伝言、連絡すべき知人のリストなどを記載しておくノートのこと。このエンディングノートの中に、SNS・メール・ブログなどのアカウント情報や、金融機関の電子口座用IDとパスワードなどをまとめて記載しておけば、デジタル遺品の整理で遺族にかかる負担は随分と軽くなります。
また公開中のSNSやブログについては、死後にアカウントを削除してほしいのか、一定期間残してほしいのか、死亡告知してほしいのかをノートに記しておくと良いでしょう。
ただし、エンディングノート自体の管理が厳重でなくては意味がないため、銀行の貸金庫に保存するなど保管方法についても考慮が必要です。
デジタル遺品に直面した遺族ができること
次に、家族やパートナーが突然亡くなってしまった場合、残された遺族がデジタル遺品整理で何ができるのかを解説します。
①パスワードの解除
故人が各種ネットサービスのパスワードを残さないまま亡くなった場合でも、遺族が申し出ればパスワードを解除できるケースが多く見られます。まずはサービスの運営元に連絡し、利用者本人が亡くなったことを伝えて解除手続きを進めてもらいましょう。
②電子口座、ネット支払サービス、スマホの解約
存在を把握している故人の電子口座やネット支払サービスは、速やかに解約しましょう。特にネット支払サービスは申し出があるまで自動で解除されることはなく、放置すると無駄な支払いが発生し続けるため要注意です。
スマホや携帯電話は解約するまで通信料等がかかり続けますが、死亡の事実が確認できるもの(死亡診断書、葬儀の案内状など)を用意して、遺族が各キャリアのショップに持参すれば解約できます。
③SNSアカウントの削除
どのSNSもアカウントが削除されない限りデータはネット上に残りますが、遺族が故人の追悼アカウントを設定することができます。
特にログインIDやパスワードがわからない場合でも申請をすれば、「追悼アカウント」へ移行したり「アカウントの削除」をすることができます。利用者の多いFacebook、Instagram、Twitterについての対処方法は下記の通りです。
故人の近親者であれば「追悼アカウント」への移行「アカウントの削除」のどちらでも行えます。
参考:亡くなった利用者について、Facebookでアカウントの追悼を申請するにはどうすればよいですか。
追悼アカウント機能で、家族や親しい友人を管理者として指定できます。管理者はアカウントに死亡告知を投稿したり、アカウントを削除したりできるので、管理者になってほしい人から承諾をとって設定しておきましょう。
Facebookと同様に「追悼アカウント」への移行「アカウントの削除」のどちらでも行えます。
参考:亡くなった方のInstagramアカウントを報告するにはどうすればよいですか。
故人の遺族や後見人などの近親者だけが、「追悼アカウント」への変更やアカウント削除のリクエストを行うことができます。ただしFacebookと違って事前設定ができないため、ヘルプセンターから遺族が申請する必要があります。
Twitterには「追悼アカウント」機能がありませんが、親近者が申請すれば「アカウントの削除」をすることができます。 参考:亡くなられた利用者のアカウントについてのご連絡方法 ないため、アカウントを削除したい場合は、遺族や後見人がTwitter社に申請する必要があります。
④デジタル遺品整理専門業者への依頼を検討
次のようなケースは、デジタル遺品整理の専門業者に依頼するのも有力な選択肢となります。
- 端末のログインIDやパスワードがわからず、中身が確認できない
- 本人のみならず、取引先など第三者の個人情報流出が懸念される
- 機密性の高いデータが多く、安全・確実に消去する必要性がある
- 自分でデジタル遺品整理をする時間が取れない
デジタル遺品整理の専門業者にできること
デジタル遺品処理の専門業者に依頼できる具体的な作業内容としては、次のような項目が挙げられます。
データの整理・移行
残されたデータの中から必要性の高いものとそうでないものを分類し、デジタル遺品を整理してくれます。また別の端末や媒体へのデータ移行なども引き受けてくれます。
不要なデータの完全抹消
パソコンを安全に処分したい場合、ハードディスク内のデータを完全に抹消してくれます。
パソコンやスマホ本体の処分
データの消去だけでなく、パソコンのハードディスクやスマホ、各種記録メディアなどを安全に処分したり、物理的に粉砕してもらうことも可能です。
デジタル機器の初期化
初期化の方法は端末の説明書に書いてありますが、デジタル機器に不慣れな遺族にとってはハードルが高いもの。専門業者に依頼すれば安全に初期化できます。
パスワードの解除
端末のパスワードがわからない場合、強制初期化やログインパスワードの解除を依頼することも可能です。ただし作業には高度な専門性が要求されるため、事前の確認が必要です。
インターネット決済の整理
故人がホームページやブログと運営していた場合、独自ドメインやレンタルサーバーを有料契約していることが多く、解約しない限り課金が続きます。専門業者に相談すれば、クレジットカード明細などから契約先を探し出し、解約などの適切な処置をとってもらえます。
デジタル遺品の整理をおこなっている業者・サービス
マレリーク
(画像:マレリークの公式サイトのスクショ)
通常の遺品整理もおこなっている業者ですが、デジタル遺品整理のみのプランがあります。公式サイトには、料金の詳細が明確に記載されています。関西エリア・関東エリアにお住いの方はチェックしてみてください。
参考:デジタル遺品整理なら大阪のマレリーク
ドクターホームネット
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デジタル遺品の整理をおこなっていて、全国に対応可能なサービス。通常の遺品整理は依頼できませんが、年間で14万件ものサポート実績がある、パソコン関連のトラブル解決サービスです。
まとめ:
デジタル機器が高齢者層にも普及するにつれて、デジタル遺品整理はますます身近な問題になってきます。万一の場合に備えて必要な対策をとっておきましょう。
そしてデジタル遺品整理を専門業者に依頼する際は、どの範囲までやってもらえるのかを見積時にしっかり確認すること。業者によっては上記のすべてに対応できるとは限らないため、データの整理や削除はもちろん、端末の回収までお願いできるのか、パスワードの解除業務にも対応できるのかなど、具体的に確認しておくことをおすすめします。
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